太田潤 出版記念写真展「いきをかさねて」
会期:2025年12月23日(火)〜28日(日)
11:00-19:00(最終日のみ17:00)
作家在廊予定は下記インスタグラムにて更新予定です。
https://www.instagram.com/tobitsu/
【ステートメント】
しっかりと休むには不向きな夜行バスのシートでも、長らく利用していると慣れるところ
もある。眠りに落ちる前、高速道路の等間隔で過ぎていく照明灯の印象をうっすらと覚え
ている。久しぶりの夜行バスは案外よく眠れた。
到着まであと15分ほどだろうか。カーテンと窓の間に顔を挟むと、もうすっかり夜は明け
ていて水平に近い高さの朝日が目に入る。雨を集めると流れが速くなる川を、バスは渡っ
ていった。
かつて青春18きっぷというもので、学生時代の長期休暇を貪るように過ごしていた私は遅
い電車には慣れているつもりだった。しかし、そういうのはやはり心持ち次第なのだろう
。この倦怠感は身体の疲労か、あるいは結露している窓から見える景色か。新潟に着くと
距離としては半分ほどだが、そこから先に新幹線はない。やがてようやく日本海が眼前に
現れる。慣れ親しんだ灰色の荒波が特急の速度で横にも流れていく。並行するように、時
間も流れ続けている。
その最期まで私のことを心配してくれていた祖父の葬儀が終わり、羽田へ戻る。モノレー
ルに乗っていると、それをどこかに置いてきてしまったかのように、東京の街が生で満た
されていることに気づく。数日間の見知らぬ環境に疲れたのか、長女は深く寝入っていた
。
祖父が亡くなった翌年に、次女が生まれた。よく笑っていきている。
【プロフィール】
太田潤
1983年、福岡生まれ、山形育ち。母が再婚の際、祖父母に養子入り。大学卒業後、桑沢デ
ザイン研究所にて学ぶ。卒業後、路頭をさまよう。2010年から作品や手製本制作をはじめ
る。現在フリーランスフォトグラファー、NPO法人中野ドローンクラブ主催。
写真展
2010年 「18月のヘクトール、形而上の電球を添えて」@MOTOYA Book Cafe Gallery
2016年 「160511第二回ユニーク画像精査結果報告書.doc」@MOTOYA Book Cafe
Gallery
2025年 「いきをかさねて」@ギャラリー晴れ
https://www.instagram.com/tobitsu/
